雨飾山(上信越)1963m
-amakazariyama-
10月14日(金) 朝5時に宿を出発。バスで登山口へ向かう。名前の通り雨はつきものらしいが、今日も天気はよさそう。
雨飾山という美しい響きにずっと憧れ、紅葉の時期にぜひとも登って見たかった。どんな景色が見られるのかと、ワクワクする。
最近人気の山なので休日には大勢の人が押しかけ、登る人、下る人でとても混雑するそうだ。 駐車場からは真っ赤な朝焼けが見られたが、雲が多く日の出は見ることが出来なかった。
コースは小谷温泉側より上り、梶山ルートを雨飾り山荘へ下る。
登山口駐車場には休憩舎と、トイレ、キャンプ場がある。団体なのでトイレに時間を要し6時出発。
一旦下り、平らな木道を歩き始める。大海川にそっているらしいが、カヤが茂って見えない。大きな柳が目立つ。
登山道には案内標識が400mごとにあり、頂上まで11箇所についている。2/11の標識が現れると、いきなり急登になる。
ブナ平紅葉 ツルリンドウ ツクバネソウ
ブナの大木がたくさん見られ、見上げると青い空にキラキラと黄金色に輝きとてもきれいだ。特にブナは、紅葉のよい時期が短かく、いつだったか玉原のペンションのオーナーが、見過ごすことがあると言っていた。今日は素晴らしい!網の目のように張ったブナの根を踏みながら一歩づつ登る。
スッタフの一人に植物にとても詳しい人がいて、真っ赤な実をつけた「ツルリンドウ」。黒い実の下に赤い羽根がついた、いかにも羽根つきの羽根のような実は「ツクバネソウ」だど教えてもらった。
この辺りは見通しはほとんど聞かないが、わずかな木々の間から登山口の駐車場が見えた。
道は一旦下り、前を行く人が「雨飾とご対面〜!」と叫んでいる。唐突に雨飾山が現れた。 雨飾山ご対面!
一気に荒菅沢まで下ると、抜けるような青空に雨飾山の全容が姿を現した。
透明な流れと飛び散る飛沫。ダイナミックに迫る岩肌。荒々しい山頂と錦に染め上げられた紅葉。そして布団菱と呼ばれる切り立った岩壁。槍の穂先のようにそそり立つ山頂。誰かが「本当にあそこまで行けるんですか?」と言うように、ここから見る山頂は尖った岩で行く人を寄せつけないように見える。
初めて見る雨飾山の素晴らしい景色。今まで何度か写真で見て想像してはいたが、はるかに越える大迫力と2年前に登った、鳳凰三山に勝るとも劣らない紅葉の見事さ!こんなによい時に来られて、本当についている。
そして行く先を見ると、狭い尾根に登山者がポツポツと米粒のように見える。
もう少しゆっくり眺めていたかったが、この先まだまだ大変な登りが待っている。沢を渡ると山頂まで90分の標識。
振り返っても、見上げても全て錦絵のようで、疲れも吹っ飛ぶ。
布団菱(中央) 紅葉の尾根
時々左側の樹間から山頂が見え隠れし、振り返れば焼山火打山の頭が少し見えてきた。
標高が上がると、森林限界は過ぎたようで、陽射しをさえぎるものが何もない。澄み切った空気に夏のような陽射しが照りつける。山々はオレンジを基調とした色に塗り替えられ、ため息が出るような美しさだ。あちこちから、きれい!素晴らしいの声が上がる。
私たちは30人以上のパーティーなので、ハシゴや段差がある斜面にくると自然と渋滞が起きる。今回はそれがかえって好都合で、息も上がらず、写真を撮ったり景色を楽しむ余裕が出来る。
紅葉の山々を見下ろす
ここより岩だらけの痩せ尾根が待っていた。斜度を増した斜面は足元も安定せず、気が抜けない。ハシゴロープもある。
雨飾山は天候が安定せず、すぐにガスが湧き、雨が降るそうだ。こんなよい天気に登山が出来とっても幸運だ。
最後のハシゴを上りきると、一面笹で覆われた笹平へと出る。海からの心地よい風が吹き抜ける。目の前に見える山頂は、荒菅沢から見た厳しい山容とは違い、丸く穏やかに見えた。 笹平と雨飾山頂
痩せ尾根を登る 笹平は今までの景色と一変し、緩やかな起伏の緑の台地。眼下には、港から広がる日本海糸魚川市街が望める。
雨飾山登頂!
100mほどの最後の急登を登ると、左右のピークの中間で北峰と南峰に分かれる。北峰には4体の石仏が鎮座し、白馬岳から連綿と続く北アルプスの山並みが見渡せた。夏に行った鹿島槍ヶ岳や肉眼でも槍の穂先まで見えた。
南峰が山頂になっていて、祠と黄色い山名標識がある。山頂は意外とく、長居はできそうにない。ここのところあまり天気がついていなかったので、この絶景と久々に見る大パノラマは言葉では言い尽くせない感激だった。
ひと時展望を楽しんだのち、笹平の分岐まで下り昼食になった。
北峰より(後方は焼山と火打山) 雨飾山(南峰)1963m
下山は梶山ルートを下る。こちらは交通の便が悪いため、個人で行くとなかなか歩くことが出来ない。7〜8年前に登ったことのあるスッタフの一人が、その頃はけもの道の様でとても歩けそうもなかったと話していた。
歩く人が少ないのか最初は、道幅も狭く岩がゴロゴロして歩きにくい。急登続きで、段差も大きい。
中ノ池を過ぎると4mのアルミのハシゴがかけてあった。そこで前を行く団体に追いつき、大渋滞となってしまった。そのあとは一旦平坦な尾根道となり、再び”難所のぞき”というところで木のハシゴがかけてあった。
沢の音が聞こえ始め、長い下りもやっと終わりに近づく。雨飾温泉三角の屋根が見えた。
紅葉の梶山ルートを下る
糸魚川市梶山、JR大糸線根知駅から根地渓谷の行き止まりにある雨飾温泉は、標高900mの秘湯の宿。湯量豊富な源泉は、重曹泉で飲むとスポーツドリンクの味がするそうで、とてもよい温泉だった。露天風呂は「都忘れの湯」といい、樹木に囲まれ、都会の喧騒を忘れさせてくれるような温泉だった。身も心もゆったりと、泊まってみたくなるような、ぬくもりを感じさせる宿だった。そしてやっぱり雨飾は雨飾なのか、今まであんなによい天気だったのに、温泉を出たら雨がポツポツ落ちて来た。
大型バスはここまで入れないため、地元の中型バスに乗り、根知の町でバスを乗り換え帰路についた。
雨飾温泉(内湯) 都忘れの湯 photo by junjun 雨飾温泉