八ヶ岳(赤岳2899m横岳2825m2
 6月13日(水)晴れのち曇り
念願のツクモグサに会えた! 
 一緒に行っクラが高山病にかかってしまったらしく、夕べはほとんど眠れず、今朝は気分が悪いと言う。
 血中酸素を計るとひどく低い。高山では普通でも平地に比べだいぶ低くなるらしいが、85をきると危険だと言う。酸素吸入を10分もすると、だいぶ回復してきた。
大丈夫そうだと言うので一安心。   オヤマノエンドウ
   7時半に荷物を小屋におき、赤岳に向け出発。
 少し歩くとオヤマノエンドハクサンイチゲなど見られるようになった。
 石ころ道をジグザグに登り、鎖場を過ぎると頂上小屋に着く。展望荘が小さく見える。
 赤岳山頂  
 30分あまりで2899m赤岳山頂に立つ。私が今まで登った山では、最高峰。
 皆で握手を交わし、しばし感激に浸る。全員で記念撮影をしたり、二人の登山家と一緒に写真を撮ってもらった。こんな機会なんてそうあるものではない。
 本来なら素晴らしい展望だそうだが、今日はあいにくあまり見えない。梅雨の合間でこれだけ晴れたのだから、いいとしなくては。
 8月に行く穂高を見てみたかったが残念。見渡す山々には雪渓がだいぶ残り、南から北へと稜線を雲が渡っていく
   小屋に引き返し、今度は北原さんの案内で横岳に向け出発する。北原さんは花博士と言われるくらい。八ヶ岳の花には精通していて、いつ、どこで、どんな花が咲いているか知りつくしているらしい。
 あらかじめ植物の名前を書いた札を40枚くらい用意してあって、それをそれぞれが2枚ずつもち、その花があったら立てていくのだという。
 チョウノスケソウ  
横岳には八ヶ岳の高山植物の90%があるという。    コマクサなど20年もしないと花をつけるようにはならないというのに。 
 しばらく行くと、グリーンロープが張ってある。ここでも、心無い登山者が植物を荒らし、仕方なく張ったのだと言う。 草丈10〜20センチくらいのキバナシャクナゲは稜線に多く見られ、薄クリーム色のシャクナゲロード
  キバナシャクナゲ   
 ミヤマキンバイ、オヤマノエンドウ、コメバツガザクラ、クモマナズナ、イワウメ、イワヒゲ、ウラシマツツジ、チシマアマナ、ハクサンイチゲ、ミヤマハタザオ、チョウノスケソウ、イワベンケイ、ミネザクラ、ミネズオウ・・・こんな岩稜地帯に次から次へと現れる色とりどりの花。高山に咲く花は可憐だが、たくましい。
 初めて聞く花も多く、覚えるのが大変だった。 
 私は初めての経験だが、2800mの高地を歩くのはいつもの山歩きとは違う。体が重く、少し歩くと息が切れる。空気の薄さを実感する。  
 日ノ岳の鎖場を過ぎると、北斜面の頂上は八ヶ岳と白馬でしか見られないという、念願のツクモグサの群生地
 こんなに咲いているとは思わなかった。細かい毛で覆われた福寿草のような黄色い花が、一面に咲いている。期待以上だ。
   ツクモグサ
   展望荘のお弁当はうなぎ弁当
 山小屋にしては珍しい。でも友達は元気がなく、食欲もない。ここから進むのは無理かもしれない。ここで4人が、ガイドさんと一足先に小屋に引き返すことになった。
 イワウメ    
 鎖やはしごを繰り返しながら進むと、今度は砂礫地にこれも珍しいウルップソウの群生。まだちょっと早いがたくさんある。   横岳まで行き、絶壁から下を見下ろすと、カモシカがいた。硫黄岳へ続く稜線、周りの景色に心を奪われながら、元来た道を引き返す。 
   ウッルプソウ  
 夜は二人の登山家のお話。松原さんは山での持ち物について。皆さん荷物を持ちすぎです。と、松原さんのザックはとってもコンパクト。  
 荻尾さんは高度障害について話してくれた。やはり極めた人の話は説得力がある。
   クモナナズナ
 6月14日(木)雨  
 風雨の中、地蔵尾根を下る
 夕べは窓を打つ雨と風で何度も目がさめてしまった。雨の中あの急な岩場を降りられるのか、考えると心配で眠れなかった。
 朝食を済ませ(ここの食事はバイキングで品数も多く、おいしい)雨と風の中下山。
 稜線の風は強かったが、南斜面の地蔵尾根になるとおさまり少し安心した。カラビナを鎖につけ、滑らないように注意しながら降りる。この雨で、右側に岩の間は急な流れが出来ていた。
 何とか行者小屋までたどり着いた。ここまで下れば一安心。雨の中の山行もまた楽しい。クラも昨日とは打って変わって、元気な声が出てきた高山病は下れば治ると言うが本当だった。
 幾重にも広がる新緑の山々、しっとりと苔むした森、雨に煙ってそこは墨絵の世界。行くときとまったく違う景色を楽しむ余裕も出てきた。8時10分に出発し、美濃戸口まで4時間。終わってみるとあっけない。
 4人の山男たちに助けられながら、雨の中急な岩場も経験したし、おもたくさん覚えられたし、実り多い3日間だった。
 ”もみの湯”の広く快適な温泉に浸かり、帰路に着いた。
 千崎さんは人を楽しませる天才で、帰りのバスでは、あの寡黙な登山家松原さんに、サザンのtunamiを歌わせてしまった。マサさんのバラードもまた素敵で、最後までとっても楽しい山行だった。