鳳凰三山A2840m
-hoosanzan-
 10月5日(土)晴れ    
 南アルプス全山紅葉
 4時に起き、外に出るとまだ星がいっぱいだった。オリオン座が頭上で輝いている。
 「人工衛星よ!」とクラ。ゆっくりと右から左へ進む星が見えた。「あっ!流れ星」とJunjun。身支度をし、カロリーメイトを口に入れ、ヘッドランプを付け5時に出発。
 小屋の裏からのいきなりの急登。暗いので道を確かめながら、赤いリボンを頼りに進む。  薬師岳の紅葉(砂払岳より)
 5時半頃になると辺りが明るくなり始め、薄紫の雲の中から八ヶ岳奥秩父の山々が顔を出す。東の空がオレンジ色に染まってきた。もう少し早ければ薬師岳から御来光が見られたかもしれない。でも今日は東の空は雲が多い。
 ヘッドランプをはずし、清々しい朝の空気を肌で感じながら歩く。零下にはならなかったようで、あまり寒くはない。森林限界を超えると砂払岳に着き、展望が開けた。少し平らになったところに薬師小屋がひっそりたたずむ。
 小屋の脇を抜け、この山特有の花崗岩の白い砂地の急斜面を登ると薬師岳山頂だ。    標識の向こうには北岳はじめ、白峰三山。富士山や八ヶ岳は少し霞んでいる。
 やわらかな朝の陽射しがふりそそぎ長い影が伸びる。広い台地は大パノラマだ。 そして、これから行く観音岳が尾根伝いに近い。南アルプス独り占めの感がある。
   薬師岳山頂(後方は北岳)  
朝日の中で見る紅葉は、また昨日と違い錦絵のように輝いて見える。   
 オレンジと黄色の大キャンバスに、赤と緑をモザイク模様に描いたような、ダイナミックな紅葉だ
 ここで朝食の予定だったが、息を呑む美しさにしばし食べるのも忘れた。
 鳳凰三山の最高峰観音岳までは快適なハイマツの尾根道で、30分ほどで着いた。
   薬師岳山頂
   花崗岩が積み重なり、その上に登ると、甲斐駒ヶ岳仙丈岳が迫り、初めて白く光る地蔵岳のオベリスクが見えた。
 北岳はさっきよりもっと大きく、登山道まではっきりわかる。私とクラ以外は北岳も制覇しているので、私たちもいつかは登ってみたいと思っている。こうして見るとだいぶ手強そうだ。

まして、そこから間ノ岳農鳥岳と縦走したクマさんの友人はすごい!相当難易度が高そうだ。覗き込むと下の南アルプス林道まで見えた。

 観音岳山頂    
 地蔵岳までは相当なアップダウンがある。シシのような岩場を過ぎると、足元には真紅のウラシマツツジ  
 滑りやすいザレ場の急坂には、鳳凰三山代表の花、タカネビランジの株があった。
 危ない岩場に多く、間近に見るチャンスは少ない花だそうだ。愛らしいピンクの花が咲く頃にも登ってみたいが、やはりこの紅葉が絶対お奨め。
     ウラシマツツジ
   待望のオベリスク 
   大変そうなアカヌケ沢ノ頭を登る人影が見える。最後の岩稜を辿り、やっと目的の地蔵岳オベリスクに着いた。
 小屋を出てから5時間。天をつくオベリスクは大迫力だ。登っている人もいたが、私達は無理をせず(自信もないので)下で楽しむことにした。
 直下の賽の河原は、真っ白な台地に何体もの地蔵が並ぶ不思議な光景だ。
 地蔵岳オベリスク    
 小屋の主人が言っていたが、子宝に恵まれない夫婦がそのお地蔵さんを一つ持ち帰り、子供が出来たら二つにして返すのだそうだ。    
今でも言い伝えられているそうだが、ここまで登り、あの石のお地蔵さんをもって帰るのも大変なことだ。  
   賽の河原(地蔵が並ぶ)  紅葉のオベリスク
  少し早いが、最後の景観を楽しみランチにした。リーダーも「いい景色はゆっくり楽しもう」と言ってくれたので、朝もお昼も1時間も休憩をとってしまった。 

ここから鳳凰小屋へは滑り落ちそうな白砂の斜面をジグザグに下る。振り返るとダケカンバの紅葉の向こうにはいつまでもオベリスクの姿が見える。

 水の豊富な鳳凰小屋で一息つき、ドンドコ沢を下る。
 後ろは甲斐駒ヶ岳  この小屋の主人は登山者に御座石鉱泉への道を勧めるのが常らしい。
 鉱泉の主人と兄弟だとか。あまりあからさまで悪評になっているようだ。私達も例にもれなかったが、青木鉱泉へ下ることに決めていた。
 このコースには4つの滝がある。沢沿いの滝というのであまり期待していなかったが、どれも落差もあり水量も多く、スケールが大きく見事だった。  
 最初は”五色の滝”で2段になった岩壁から清冽な流れが、白いしぶきを上げながら落ちてくる。
 それにしてもドンドコ沢の下りはきつい。標高差1700mを一気に下る。
 「ドンドコドンドコ下るからドンドコ沢って付いたのかしら?」とJunjun。
 何度か沢を渡るが、どこも水量が多い。次の”白糸の滝”は水量が多すぎ、糸には見えない。
 鳳凰の滝だけは登山道から外れていたためパスしたが、”南精進の滝”まで全部見物した。 五色の滝 
 高度を下げるごとに森の緑が濃くなってきた。  
 だんだん疲れもたまってきて、「青木鉱泉まで40分」の立て札にたどり着いた時は、皆もうバテバテだった。

そしたら、なんとそこにはKawashimaさんの姿が・・・。ありがたいことにこんな山奥まで私たちを迎えに来てくれたのだと言う。

 青木鉱泉に着くと、山小屋で一緒だった女性と、おかみさんが心配顔で出迎えてくれた。
 ひなびた風情のある宿で、ゆっくりと温泉に浸かり、どろどろの疲れを洗い流した。お風呂上りにビールと山菜そばがとっても美味しかった。
 帰って来て、2〜3日は筋肉痛だったが(鉄人クラをのぞく)鳳凰三山は私の心に残る山になりそうだ。そして素晴らしい紅葉はベスト3に入る。
 写真提供yukky&setsuo