甲斐駒ヶ岳2967m(南アルプス)
-kaikomagtake-
 9月19日(日)曇りのちガス時々風雨のち晴れ 
 3時起床、4時朝食  
 宵のうちは雨が降っていたが、夜中の12時頃に起きてみたらやんでいた。(何しろ早く寝るので、変な時間に目が覚める)
朝は3時に電気がつくので、起こされてしまう。やっぱり星は出ていなかった。 
 4時には朝食を済ませたが、私たちは明るくなってから出発しようと、5時半近くまでのんびりしていた。
 夏と違って明るくなるのが遅い。私たちが小屋を出る頃には、もう北沢峠を出発した人達が登ってきた。  シラビソの森を抜ける(5:30)
   薄暗い森を歩き始めたら空がピンク色に染まってきた。朝日が射して、山の一部がスポットライトのようにオレンジに照らされた。
 シラビソの森を抜けると、岩を積み上げたようなガレ場に出た。
 朝日でオレンジ色になった山 元気の元は笹団子 
 新潟土産にMrs,Kimiが美味しい笹団子と、ちまきを持って来てくれた。今回あまり天気がよくなかったし、長い行程なので、少しずつ食べられる行動食としてもとてもよかった。  新潟の人は縦走する時には持参する人も多いそうだ。笹の葉には殺菌作用もあるし、理にかなっている。 
仙水峠までは緩やかな上りで、身体が慣れるまではちょうどよい。
   仙水峠手前のガレ場  
   仙水峠栗沢山と駒津峰に挟まれたV字状の峠で、天気がよければ眼前に摩利支天、その奥には甲斐駒ヶ岳が、向かいには鳳凰三山のオベリスクも望むことが出来るそうだ。
 だが、あいにく今朝はあまり天気がよくない。仙水峠も真っ白にガスっていて何も見えない。それに風も強い。
 一休みしていると、ガスがサッーと切れ、摩利支天が姿を現した。近くで見る岩峰に皆感激し、急いでシャッターを切った。
 仙水峠後方は摩利支天  仙水峠から駒津峰までが今日一番きつく、長い登りになる。
 標高差500m、樹林帯を黙々と登る。  
 栗沢山のほうを振り返ると、もう紅葉がはじまっている。辺りはダケカンバ帯に変わった。やはり黄色く色づき始めていた。
今日のリーダーはMr.Kimi。ペース配分もちょうどよく、辛い急登も無理なく歩ける。Junjunが作った行程表ともほとんど同じだ。 
 一時薄日が射してきたが、ハイマツ帯になった頃には雨が降り出し風も強くなってきた。雨具とザックカバーをつける。  強風の駒津峰
   私はこんな強風は初めての経験だった。立っていてもよろける。気をつけないと、帽子も雨具のフードも飛ばされる。
 駒津峰で、ツアーの人たちが強風のため、ここまでで中止にすると話していた。
 私たちもちょっと迷ったが、とりあえず行けるところまで行こう!ということになった。
 駒津峰2740m  駒津峰から六方石までは岩場の下りになる。先は真っ白にガスっていて全く見えない。
 狭い尾根道を下ると、風は静まってきた。心配していたが、これなら何とか行けそうだ。    
 痩せた岩陵帯の上り下りが続く。滑らないように注意しながら進む。ガスの中から時々口を開けたような花崗岩の巨岩が現れた。これが六方石だ。
   痩せた岩陵を下る  六方石
  いよいよ白いピラミッドへ 
 最後の登りは駒ヶ岳へ岩場を直登するルートと、摩利支天の肩から巻き道を行く2つのルートがある。岩場が得意なYasukoさんは直登に惹かれているようだったが、岩が濡れているし、大勢なので巻き道を行くことになった(あーよかった)。
 風がおさまってきたので少しほっとしたが、直登ルートでなくても、岩場が続き油断は出来ない。
 あと一息  雪のように見えた山頂付近は、真っ白な砂礫で花崗岩のザレ場だった。標高が上がると空気も薄くなり、足が重い。。。
 ガスっていてなかなか山頂が見えてこない。疲れた!やはり大変な山だった。簡単ではないが、誰一人弱音を吐くものはいなかった。
 薄っすら標識が見えた!今度こそ着いたかと思ったら、黒戸尾根への分岐だった。ここは日本三大急登の一つだそうだ。想像しただけで、ため息がでる。  
不動明王が祭られた祠があった!やっと着いた!
無事に登頂できたことに感謝して、手を合わせる。10時5分甲斐駒ヶ岳登頂!4時間半の大変な登りだった。以外に広い山頂は、もう多くの人々で賑わっていた。 
 記念撮影をしていたら、横断幕を持った岩手の夫婦にシャッターを押して欲しいと頼まれた。  甲斐駒ヶ岳登頂 ヤッター!!

横断幕には”2900m以上(32山)登攀達成”と書かれていた。甲斐駒が32座目だそうだ。去年3000m級は、隣の仙丈岳で全部制覇したそうだ。はるばる岩手から来て、すごい夫婦もいるものだ。

駒津峰から思うと、風もそんなに強くなかった。大きな岩場の影でランチにした。駒津峰であきらめずによかったねと口々にいう。大パノラマは見られなかったが、皆、満足げな顔をしている。

 

これからまた、長い下りが待っている。駒津峰まで戻り、双児山のピークを越え北沢峠に戻る。

 今日は三連休とあり、人が多い。団体がゆっくりペースで下るので、狭い登山道は大行列になってしまった。
 さっきより空が明るくなり、ガスが時々切れるようになった。
 山頂直下、ガレ場を下る  六方石の急な岩場に差し掛かったとき、見えるよ!と誰かが叫んだ。
 振り返ると、一瞬だったがやっと、初めて甲斐駒ヶ岳山頂が顔を出した。その横には摩利支天も見えた。  
 あの強風の駒津峰はすっかり穏やかになり、薄日さえ射して暑くなってきた。雨具を脱いで一休みする。
 天気はどんどん快復し、駒津峰を下りだしたら、周りの山々が少しづつ姿を現し始めた。
 ハイマツが緑の波のように押し寄せ、そのところどころに真っ赤なナナカマドのコントラストが美しい。  駒津峰を下る
   右側の谷底が見え、その上を帯のように南アルプス林道が走る。バスがミニカーのようだ。
 向かい側の雲も切れ、早くも黄色く衣替えし始めた山々がダイナミックに現れた。まるで映画の1シーンのようだ。
 
 色づき始めた山    
双児山を目指して登っていると、右手には険しい鋸山が、そして最後に厚い雲が切れ、やっとのことで鳳凰三山が現れた。オベリスクも見える!     
   鋸岳  鳳凰三山
  そして双児山の一歩手前では、青空と、最後のご褒美、甲斐駒ヶ岳と摩利支天の美しい姿がやっと全容を現した。あの白く光る頂上に立ったと思うとあらためて感激。 

ここからは樹林帯を下る。名残惜しみながら、最後の景色に別れを告げる。

 シラビソの原生林は、九十九折の長い急坂が続く。
 甲斐駒ヶ岳と摩利支天(画像クリックで拡大)   くたくたになる頃、やっと北沢峠に着いた。
長谷村行きのバスは3時55分発だったが、人が多いのですぐに出発した。行きと違い、帰りの車窓からは大パノラマを見ることができた。  
あの強風の駒津峰であきらめず、甲斐駒ヶ岳の頂上に立てたことは、一人でも二人でも出来なかったと思う。よい仲間がいたから出来たこと。 
行動時間9時間半、長くきつい山だったが、だからこそ満足度も高く、充実した山行だった。北沢峠を離れる時、今度はきっとここから仙丈岳を目指そうと心に決めた。 
photo by Setsuo&Yukky    双児山より(甲斐駒をバックに)