文学散歩⑫
 2015/06/13(土)曇り時々晴れ
奥多摩湖に石川達三『日蔭の村』を偲ぶ
コース:奥多摩駅ー奥多摩湖一湖畔公園ーみはらしの丘ー水と緑のふれあい館ー展望塔ー慰霊碑ー奥多摩駅
 歩行:約2km  行程:3時間30分  参加者:14名
奥多摩湖畔を廻り、小河内ダムの歴史や、湖底に故郷を失った小河内村民の悲哀を描いた石川達三『日蔭の村』に、時代に翻弄された人々の心境を偲ぶ。
石川達三の本は若い頃何冊か読んだが、日陰の村は読んでいなかったため、事前に図書館で借りた。黄色く変色した本は、字がとても小さく2段になっていた。昔はよくこんな小さな活字を読めたものだ。頑張って読んでいたが途中で挫折し、最後まで読み終えなかった。
暑くなるとの予報だったが、やはり奥多摩まで来ると風は爽やかで気持ちいい。
湖畔には、小河内ダムのあゆみや建設の過程などが記されていた。
小河内ダムの建設により、600世帯、3000名が故郷を離れた。なぜか奥多摩周辺ではなく、山梨県に移った人が多かったとか。 
多摩川上流の9ヶ所に候補地が上がったが、地盤、水量などの問題を経て、現在の場所に決まった。昭和13年に着工し、戦争で5年間中断したが、32年に完成した。
湖底の故郷 歌碑 村民の思いを島田磐也が詩を作り、東海林太郎が歌ったそうだ。 
みはらしの丘は山の斜面を歩くハイキングコースになっている。春は桜、秋は紅葉と四季折々に楽しめる。
向かいには御前山から三頭山に続く山並みが見渡せる。
みはらしの丘でレクチャー 奥多摩湖展望
  徳冨蘆花の兄蘇峰が読んだ詩「登り登りて水源を極む、谷を隔てて幾村々、崖は竣にして泉は筧を鳴らす。岳高くして、雲は軒に入る」と刻まれている。   
蘇峰はこの先にある温泉地、熱海が好きで、よく通ったそうだ。 
松尾芭蕉の句碑もある。
 石碑の小径 徳冨蘇峰碑   水と緑のふれあい館 
水と緑のふれあい館で昼食後、3Dシアターを見る。専用のメガネをかけると、大迫力の滝や川の流れ、木の葉から滴り落ちる水の一滴が降りかかるようで、奥多摩の自然を楽しむことが出来た。
ダムを渡り、途中の展望塔に登ると、ダムのジオラマ、3F床には流域全体図がイラストマップに描かれている。
87名の犠牲者を出す難事業だったため、慰霊碑が建立されている。 
湖の向こうの山は、倉戸山から鷹ノ巣山への稜線だ。
 展望塔(ダムの上を渡る)    慰霊碑(対岸)
バス停に戻り、奥多摩駅に向かう。道路は所々で「奥多摩むかし道」と行き交うが、そこを歩くと、当時ダム建設のために奥多摩駅から(6.7km)鉄道が引かれていた痕跡がある。
奥多摩は山歩きで度々訪れるが、ほとんど素通りしていたので知らないことも多かった。こうして教えていただいたことで、次に来た時には見る目が少し変わってくる。